こんにちは。ワークイズ代表の桑原祐介です。
前職で新入社員研修をしていた頃の話です。
私が行う入社時研修では、「何のために働くのか?」を新入社員が1人ずつ、3分間スピーチで発表してもらうメニューがあります。
これは、同じ新入社員同士でも「何のために働くのか?」についてきちんと考えられている人と、まったく考えていない人、いまだ悩みの中にある人、と、その発達段階において大きなばらつきがあるため、お互いの思いを聞くことで自らの思いを発展させ、深めることを目的としています。
だから、ここでの発言に嘘やきれいごとは不要、ということにしています。
やはり面接では志望動機を作ってくる学生さんたちも、本音を言わせれば「お金のために働くとしか思えない」「できれば1日中寝ていたい」といった思いを抱えている人がいます。もちろん全員ではありませんが、そういう新入社員たちもある程度の数でいるものなのです。
(こうしたネガティブなことを口にさせてはならない、という向きの意見もありますが、私はそのようには思っていません。ネガティブな意見を封じてしまうと、新入社員たちは何も言わなくなります。苦しくても、納得がいかなくても、腹が立っても何も言わなくなり、ようやく言ってきたときには「退職します」と告げに来る……そんな段階までサインを発しなくなってしまうからです。仕事でも勉強でもそうですが、わからないものはわからないと言ってもらった方がこちらも対処ができるというもの。「何のために働くのかわからない」のであればハッキリそう言ってもらって、それじゃどこで引っかかっているのか、何に気づけていないのか、探っていけばよいと思っています。でないと、いつまでたってもわからないままになってしまいますので。仕事でも勉強でもそうでしょう? 時間が経てば自然にわかるようになる、ということはむしろ稀なことだと思っています)
ちなみに、同期とはいえ新卒20〜30人の前で3分話してくださいと言うと、みんなかなり緊張します。
「全員の前でわかりやすく話す」「大きな声で、抑揚と緩急をつけてハッキリ話す」など、話し方や発表の練習という側面も持たせています。
また、研修では高校生と大学生を一緒にして、同じメニューで研修を受けさせていました。
高校生には「社会に出たら「高卒(=18歳)だから大卒(=22歳)よりできない」は通りません」と指導しますし、大卒には「とはいえ年齢差はあるのだから、研修態度や学びの面において見本となるように」と指導することで、よい緊張感が生まれるからです。
ちょっと脱線しましたが……
こうして「何のために働くのか?」を発表させると、逆転現象が起こることがしばしばあります。
高卒の新入社員の方が、大卒新入社員よりも「何のために働くのか」という考えをずっとしっかり持っていることがよくあるのです。
「私はこれまで親に育ててもらい、高校まで行かせてもらいました。早く社会に出て恩返しをしたいです」
「両親が働く姿を見て、同じような職業に就きたいと思っていました。職場に配属されるのが楽しみです」
中にはご両親とも健在なご家庭だけではなく、「一生懸命がんばってくれた母を少しでも早く楽にさせてあげたい」などと言う方もいます。
それに対して大学生、特に男性(あくまで傾向としか言えませんが、残念ながら男性に多いのです)は「働かないと生きていけないから」「世間体」などなど、ポジティブな考え方に至れていない方が少なからずいます。
そして、研修後の日報を見ると決まって「所詮は高校生、と思っていたけれど、自分たち(=大学生)よりもずっとしっかりした考えを持っていた。自分の発表を振り返ると恥ずかしい」というコメントが数名から寄せられます。
講師の私が聞いていても正直そう思うのです。「高校生の方がしっかりしているなぁ」と。
大学に進学するということは、本来は「学びたい」とか「学んだ上で将来につなげたい」という目的があるはずなのですが、高卒者の50%以上が進学する現代では、単に「職業選択の先送り」になっているような気がします。
まぁ、偉そうなことを書いているこの私も、大学生のころはやりたい仕事がなくて仕方なく就職したクチなので、全然立派ではないんですけどね……
就活生にとって、どうしても就職とお金は切り離せないものだと思います。
そこで、若い人たちにはこんな話をします。
「宝くじが当たったらどうする? 遊んで暮らす? でも、童話や昔話に出てくる王様やお殿様はたいてい「あぁ、毎日退屈だ」と言っているよね? どうしてだと思う?」
「年金で暮らせるお年寄りも、公園の草むしりをしたり、道路のごみを掃いたり、小学生の通学路で旗を持って立ったりするよね? 誰からもお金はもらえないけれど、何でタダで働くんだと思う?」
「(複数のアルバイトを経験した学生さんに)お金がよかったけれどやりたくない仕事ってあった? 反対に、お金は安かったけれど楽しかった仕事は?」
この辺の答えを一緒に考えていくと、「何のために働くのか?」の答えにたどり着くヒントが得られるような気がします。
それでも、若い人たちにとっては、腑に落ちて理解するところまではいかないことがほとんどです。
でも、ヒントを持って成長していくのと、何も持たずに成長していくのでは、将来「人生楽しかった」と言えるか「人生つらいことばかりだった」と言う羽目になるか、くらいの違いが出てくるような気がしてならないのです。
だから、私は若い人たちにヒントを与えたいと思っています。
10年、15年してからわかってくれればいい。それで十分ですので。
posted by work-is at 18:53|
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